宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士の真実！歴史的悲劇と現代のリスク

「もしも、旅行先から家に帰れなくなったら…」

想像しただけで冷や汗が出ますよね。財布を落としたとか、終電を逃したとか、そんなレベルの話ではありません。その旅行先が、空気もなく、誰も助けに来られない「宇宙」だとしたらどうでしょう？

実はこれ、SF映画の話ではないんです。

歴史を振り返ると、政治的な理由や機体のトラブルで、予定通りに地球へ帰還できなくなった「宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士」たちが実在します。国が消滅して帰る場所を失ったり、技術的な不具合で何ヶ月も足止めを食らったり…。

正直に言うと、私も詳しく調べるまでは「宇宙飛行士なんてエリート中のエリートだし、万全のサポートがあるから大丈夫でしょ」と高を括っていました。でも、その実態を知れば知るほど、彼らが直面している孤独と恐怖は、私たちの想像を絶するものだと気づかされたんです。

この記事では、歴史に残る「帰れなくなった」事例から、現代でも起きている最新のトラブル、そしてちょっと背筋が凍るような都市伝説まで、宇宙滞在のリスクを余すところなく解説します。

読み終える頃には、夜空を見上げる時の気持ちが、少し変わっているかもしれませんよ。

 

宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士とは？

「宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士」と聞くと、映画『ゼロ・グラビティ』のように宇宙空間を漂流する姿をイメージするかもしれません。しかし、現実の「帰れない」状況は、もう少し複雑で、ある意味でもっと生々しいものです。

ここではまず、なぜ彼らが帰れなくなってしまうのか、その根本的な原因と、実際に過去にどのような事例があったのか、全体像を掴んでいきましょう。これは決して他人事ではなく、将来私たちが宇宙旅行に行く時代になれば、直面するかもしれないリスクなのです。

機械の故障、スケジュールの変更、そして国家の事情…。宇宙飛行士たちを地上に繋ぎ止める「見えない鎖」について、一緒に紐解いていきましょう。

宇宙空間での滞在延長と帰還不能のリスク

宇宙飛行士が予定通りに帰還できない主な理由は、大きく分けて「技術的なトラブル」と「運用上の都合」、そして稀に「政治的な事情」があります。

宇宙船は、言うなれば「部品点数が数百万個ある空飛ぶ精密機械」です。そのうちの一つでも不具合を起こせば、命に関わる事故に直結します。そのため、少しでも異常が見つかれば、安全が確認されるまで帰還は延期されます。

これは心理学でいうところの「正常性バイアス（自分だけは大丈夫と思い込む心理）」を強制的に排除する、非常にシビアな安全管理の結果とも言えます。「まあ、なんとかなるだろう」で発射ボタンを押すわけにはいかないのです。

実際に起こりうるリスクとしては、以下のようなものがあります。

これらのトラブルが起きると、数日から数ヶ月、場合によっては半年以上も滞在が延長されることになります。まさに「宇宙での足止め」です。

想像してみてください。出張が1週間の予定だったのに、「帰りの飛行機が故障したので、あと半年ホテルにいてください」と言われたらどう思いますか？しかも、そのホテルからは一歩も外に出られず、家族にも会えないのです。精神的なストレスは計り知れません。

過去に起きた長期滞在の有名な事例

では、実際に過去にはどのような「帰還延期」の事例があったのでしょうか。

実は、宇宙開発の歴史はトラブルの歴史でもあります。予定通りにいかないことの方が普通と言っても過言ではないかもしれません。

これらの事例に共通するのは、宇宙飛行士自身のミスではなく、外部の要因によって運命を左右されたという点です。

彼らは皆、プロフェッショナルとしてミッションを遂行しましたが、その裏には強靭なメンタルと、地上スタッフの必死のサポートがありました。特にセルゲイ・クリカレフの事例は、国家の消滅という前代未聞の事態に巻き込まれたケースとして、歴史に深く刻まれています。

これは単なる「遅刻」ではありません。人生の一部を、予期せぬ形で宇宙に捧げることになった人々の物語なのです。

 

宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士、クリカレフの悲劇

「宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士」として最も有名なのが、セルゲイ・クリカレフです。

彼の物語は、まるで極上のドラマを見ているかのような、数奇で過酷なものでした。彼が宇宙にいる間に、彼を送り出した国「ソビエト連邦」が地図から消えてしまったのです。

この章では、彼がなぜ「最後のソ連市民」と呼ばれるようになったのか、そして311日もの間、崩壊していく祖国を宇宙から見つめ続けた彼の孤独に迫ります。これは歴史の教科書には載っていない、一人の男の壮絶なサバイバル記録です。

ソ連崩壊と同時に国を失った「最後のソ連市民」

1991年5月、クリカレフはソビエト連邦の宇宙ステーション「ミール」へと旅立ちました。当初の予定では5ヶ月ほどの滞在で帰還するはずでした。

しかし、彼が宇宙にいる間に、地上の情勢は激変します。ソ連国内でクーデターが起き、共和国が次々と独立を宣言。そして1991年12月、ついにソビエト連邦は解体され、ロシア連邦などが誕生しました。

ここで問題が発生します。彼を地球に帰すための宇宙船（ソユーズ）を飛ばす予算が、混乱した新政府にはなかったのです。

さらに、宇宙船の打ち上げ基地であるバイコヌール宇宙基地は、独立したカザフスタン共和国の領土となってしまいました。ロシアとカザフスタンの間で基地の使用権を巡る交渉が難航し、クリカレフを迎えに行く船は一向に打ち上げられません。

彼は文字通り、宇宙に取り残されました。パスポートに記された国籍「ソ連」は、もうこの世に存在しないのです。彼は宇宙空間で、亡国の民となってしまったのです。

311日間の孤独なミッションと帰還後の変化

「すぐに交代の要員を送るから待て」と言われ続け、結果的に彼の滞在は311日（約10ヶ月）に及びました。

考えてみてください。狭い宇宙ステーションの中で、眼下にあるはずの故郷がバラバラになっていく様子をニュースで聞くことしかできない無力感。食料や物資は補給船で届きますが、いつ帰れるか分からない不安は、精神を蝕むには十分すぎる時間だったはずです。

これは心理学でいう「学習性無力感（何をしても状況が変わらないと悟り、抵抗を諦める心理）」に陥ってもおかしくない状況です。しかし、クリカレフは任務を放棄せず、ミールの維持管理を続けました。

1992年3月、ようやく彼は地球に帰還しました。カプセルから這い出した彼の宇宙服には、もう存在しない「ソ連国旗」のワッペンが付いたままでした。彼はやつれ、顔色は蒼白でしたが、その目は力強かったと言われています。

驚くべきことに、彼はその後も宇宙飛行士を続け、なんと合計で803日もの宇宙滞在記録（当時世界一）を打ち立てる「宇宙のレジェンド」となりました。「帰れなかった経験」が、彼を最強の宇宙飛行士へと変えたのかもしれません。

彼の物語は、どんなに絶望的な状況でも、職務を全うすることの尊さを教えてくれます。それにしても、国がなくなるなんてトラブル、スケールが大きすぎますよね。

 

現代でも宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士はいる？

「クリカレフの話は30年も前の昔話でしょ？」と思ったあなた。

実は、技術が進歩した現代でも、宇宙飛行士が帰れなくなるトラブルは頻発しています。むしろ、民間企業が参入し、宇宙船の種類が増えたことで、新たなリスクが生まれているとも言えるのです。

ここでは、つい最近ニュースになったボーイング社の「スターライナー」や、ロシアの「ソユーズ」で起きたトラブルについて解説します。これらは決して対岸の火事ではなく、宇宙開発の最前線で起きている「現在進行形の試練」なのです。

最新のテクノロジーを持ってしても、宇宙という過酷な環境には勝てないこともある。そんな現実を見ていきましょう。

ボーイング「スターライナー」のトラブルと滞在延長

2024年、大きな話題となったのが、ボーイング社が開発した新型宇宙船「スターライナー」の有人飛行試験です。

当初、ブッチ・ウィルモア飛行士とスニ・ウィリアムズ飛行士の2名は、国際宇宙ステーション（ISS）に約8日間滞在して帰還する予定でした。しかし、推進システム（スラスター）の不具合やヘリウム漏れといった問題が次々と発覚。

NASAは「安全に帰還できる確証がない」と判断し、彼らの帰還を無期限に延期しました。結果的に、彼らはスターライナーではなく、数ヶ月後に打ち上げられるスペースX社の「クルードラゴン」で帰還することになり、滞在期間は8ヶ月近くに伸びる見込みとなりました。

彼らの荷物（着替えなど）も短期滞在用しか持っていなかったため、物資の不足も懸念されました。この一件は、新型宇宙船の開発の難しさと、スケジュールの脆弱さを世界に露呈することになりました。

ソユーズ宇宙船の冷却剤漏れとフランク・ルビオ

もう一つの事例は、2022年に起きたロシアの「ソユーズMS-22」のトラブルです。

ISSにドッキング中だったソユーズ宇宙船に、微小な隕石（または宇宙ゴミ）が衝突し、冷却剤が宇宙空間に漏れ出すという事故が発生しました。冷却機能が失われた宇宙船は大気圏再突入時の熱に耐えられない（または内部が高温になりすぎる）ため、乗員を乗せて帰還することが不可能になりました。

この船に乗って帰る予定だったNASAのフランク・ルビオ飛行士ら3名は、迎えの「ソユーズMS-23」（無人で打ち上げられた救助船）が到着するまで待機を余儀なくされました。

その結果、ルビオ飛行士の滞在記録は371日となり、米国人宇宙飛行士の最長連続滞在記録を更新することになりました。意図せずして記録保持者になってしまったわけです。

このように、現代でも「宇宙から帰れなくなる」ことは現実に起きています。それはクリカレフの時のような政治的な理由ではなく、より物理的で突発的な事故によるものが多いのが特徴です。

 

もし宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士になったら？

もしあなたが宇宙飛行士で、「帰還不能」を告げられたら、真っ先に心配するのは何でしょうか？

「酸素は持つのか？」「ご飯はあるのか？」「トイレは詰まらないか？」

生きるためのライフラインが絶たれたら、そこはただの地獄です。しかし安心してください。現代の宇宙ステーションには、想定外の事態に備えたバックアップシステムと、地上からの強力な支援体制があります。

この章では、足止めを食らった宇宙飛行士たちがどのように命を繋ぐのか、その具体的なサバイバル術と、緊急レスキューの仕組みについて解説します。これを読めば、宇宙での「籠城戦」がいかに緻密に計算されているかが分かるはずです。

酸素や食料の補給はどう行われるのか

国際宇宙ステーション（ISS）には、通常、数ヶ月分の余剰食料と水、酸素が備蓄されています。

たとえ有人宇宙船が来られなくなっても、無人の補給船（日本の「こうのとり」や米国の「カーゴドラゴン」、ロシアの「プログレス」など）は定期的に打ち上げられています。これらは人間を運ぶより安全基準が緩いため、比較的頻繁に物資を届けることができます。

酸素に関しては、地球から運んだ水を電気分解して酸素を作り出すシステムや、二酸化炭素を除去する装置が稼働しています。水も、尿や汗をろ過して飲料水に戻す再生システムがあり、循環率は90%以上と言われています。

つまり、機械さえ壊れなければ、水と空気はある程度自給自足できるのです。

ただし、好きな食べ物が食べられないストレスや、新鮮な野菜不足は深刻です。「またフリーズドライか…」というぼやきは、長期滞在者の日常茶飯事かもしれません。食の楽しみが制限されるのは、人間にとってボディブローのように効いてくるストレス要因です。

緊急時に迎えに来るレスキューミッションの仕組み

では、本当に命の危険が迫った場合、どうやって脱出するのでしょうか？

通常、ISSには定員分の「救命ボート」としての宇宙船が常にドッキングされています。もしISS自体に致命的な損傷（火災や空気漏れなど）が起きた場合は、現在ドッキングしている船に乗って緊急脱出します。

しかし、先ほどのソユーズやスターライナーの例のように、「乗ってきた船自体が壊れた」場合はどうするか。

その時は、地上から「空席の宇宙船」を打ち上げて迎えに行きます。

これを「レスキューミッション」と呼びますが、準備と打ち上げには数週間から数ヶ月かかります。タクシーのように電話一本ですぐ来るわけではありません。その間、宇宙飛行士はISSの中で耐え忍ぶしかないのです。

NASAやロスコスモス（ロシアの宇宙機関）は、常に最悪のシナリオを想定して、予備の機体やロケットの準備を進めています。宇宙開発において「プランB」がないことは、死を意味するからです。

 

宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士の都市伝説

さて、ここからは少し照明を落として、囁かれている「怖い話」に触れてみましょう。

公式には発表されていないけれど、実は宇宙の闇に消えていった飛行士たちがいるのではないか…。そんな噂を耳にしたことはありませんか？

いわゆる「ロスト・コスモノート（失われた宇宙飛行士）」と呼ばれる都市伝説です。冷戦時代の米ソ宇宙開発競争の裏で、失敗したミッションが隠蔽されているという説は、今なお根強く語られています。

火のない所に煙は立たないと言いますが、果たして真相はどうなのでしょうか？好奇心を刺激するミステリーの世界へ、少しだけ足を踏み入れてみましょう。

闇に葬られた「ロスト・コスモノート」説の真偽

「ガガーリンが人類初の宇宙飛行士になる前に、実は失敗して亡くなった飛行士が何人もいる」

これがロスト・コスモノート説の核心です。当時のソ連は秘密主義を徹底しており、成功したミッションしか公表しなかったため、このような疑念が生まれました。

具体的には、「ウラジーミル・イリューシン」という飛行士がガガーリンより先に飛行したが、着陸に失敗して中国に不時着したため隠蔽された、という説などが有名です。

しかし、ソ連崩壊後に公開された機密文書からは、訓練中の事故死（ボンダレンコ飛行士など）は確認されましたが、宇宙空間で帰還不能になったり、漂流したまま死んだりした飛行士の記録は見つかっていません。

現代の歴史家の多くは、ロスト・コスモノート説を「冷戦が生んだプロパガンダや想像の産物」として否定しています。ですが、完全に否定しきれない「不気味な空白」が、この伝説を生きながらえさせているのも事実です。

通信記録に残された謎の音声と未解決の噂

この都市伝説を有名にしたのが、イタリアのアマチュア無線家「ジュディカ＝コルディグリア兄弟」の存在です。

彼らは1960年代、ソ連の宇宙船からの通信を傍受したと主張しました。その録音テープには、苦悶するような呼吸音や、助けを求める女性の声、心拍音が途絶える瞬間などが記録されていると言われています。

特に有名なのが、大気圏再突入に失敗して燃え尽きていく宇宙船からの、女性飛行士の絶叫とされる音声です。

「暑い…暑いわ！何もかも燃えている…再突入するわ…ああ！」

これが本物かどうかは、今も議論が分かれています。専門家の多くは「捏造」や「地上実験の通信の誤認」だと指摘していますが、その生々しさは聞く人を戦慄させます。

これは心理学の「確証バイアス（自分が信じたい情報を集めてしまう心理）」が働きやすいテーマです。「ソ連ならやりかねない」という先入観が、ノイズ混じりの音声を「悲劇の証拠」に変えてしまったのかもしれません。

真実は闇の中ですが、宇宙という場所が、それだけ人々の恐怖と想像力を掻き立てる場所であることは間違いありません。

 

宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士についてのまとめ

ここまで、宇宙から帰れなくなった宇宙飛行士たちの実話とリスク、そして都市伝説について解説してきました。

華やかに見える宇宙開発の裏側には、クリカレフのように国を失いながらも耐え抜いた英雄や、技術トラブルで不自由な生活を強いられる現代の飛行士たちの姿がありました。そして、彼らを支える地上のスタッフや、最悪の事態に備えたシステムの存在も忘れてはいけません。

「宇宙から帰れない」という事態は、単なるトラブルではなく、人間の精神力と技術力の限界が試される究極の局面です。もし私たちが将来、気軽に宇宙旅行に行けるようになったとしても、そこには常に「帰れないかもしれない」というリスクが、小さな荷物のように紛れ込んでいることを心の片隅に留めておくべきでしょう。

それでも人類が宇宙を目指すのは、そのリスクを超えた先にある景色を見たいという、根源的な欲求があるからなのかもしれませんね。